DEIが止まっているように見えるのは、「判断のしかた」が変わっていないからかもしれない

制度や人数を変えても、人についての「判断」が同じなら、機会の偏りは残る
多くの企業が、女性管理職比率や採用比率の目標を置き、制度を整え、研修や啓発に取り組んできました。
それでも、
「DEIには取り組んでいるのに、
組織が変わった実感があまりない」
という声があります。
その理由の一つは、制度や人数を変えても、組織の中で日々繰り返される人についての判断までは変わっていないからかもしれません。
組織では、毎日のように、次のような判断が行われています。
- 誰に重要な仕事を任せるのか
- 誰を次のリーダー候補として推薦するのか
- 誰に新しい役割への挑戦機会を与えるのか
- 誰には「まだ早い」と判断するのか
- 一度失敗した人に、もう一度機会を与えるのか
こうした判断の一つひとつが、その人の経験をつくり、次の評価や機会につながっていきます。
DEIを実際の機会につなげるには、制度や人数だけではなく、組織が人について、どのように判断しているのかを見る必要があります。
1. DEIの次の課題は、「機会」がどう決まっているか
多様な人が組織にいることは重要です。
しかし、組織にいることと、その人に実際の機会が与えられることは同じではありません。
たとえば、
- 重要なプロジェクトに参加する
- 顧客の前に立つ
- 新しい仕事に挑戦する
- 経営層に自分の仕事を説明する
- チームや事業を率いる経験をする
こうした経験は、本人が希望しただけで得られるものではありません。
多くの場合、その前に、
「この人に任せるか」
「この人を推薦するか」
「この人に機会を与えるか」
という、誰かの判断があります。
DEIを「人数」から「機会」へ進めて考えると、
誰に、どのような機会を与えているのかを決める人材判断が見えてきます。
2. 日々の小さな判断が、経験の差になっていく
人材判断というと、採用や昇進のような大きな意思決定を思い浮かべるかもしれません。
しかし、実際には、その前に数多くの小さな判断があります。
たとえば、
- 今回の仕事は、あの人に任せよう
- この人には、まだ負担が大きいだろう
- 本人も、この仕事は望んでいないだろう
- 今回は、経験のある人に任せた方が安心だ
一つひとつは、その場では合理的な判断に見えるかもしれません。
しかし、その判断が繰り返されると、仕事を任される人と任されない人の間に、経験の差が生まれます。
経験の差は、やがて実績の差として見えるようになります。
そして次の人材判断では、その実績の差が、新たな判断材料になります。
つまり、誰に機会を与えるかという判断そのものが、次の人材判断の前提をつくっているのです。
3. 同じ仕組みがあっても、判断は同じになるとは限らない
人事制度や評価基準を整えることには、大きな意味があります。
ただし、同じ制度や基準があっても、人の判断が完全に同じになるわけではありません。
私たちは、すべての判断について、なぜそう考えたのかを一つひとつ自覚しているわけではありません。
これまでの経験や学習、繰り返し見聞きしてきた情報、社会的なイメージなどが、気づかないうちに判断に影響することがあります。
そのため、同じような能力や実績を持つ人を見ても、
- 「この人なら任せられそう」
- 「この人には、まだ少し早い」
- 「本人も望んでいないだろう」
と、異なる判断が生まれることがあります。
問題は、こうした判断が生まれること自体ではありません。
その判断の理由や前提が確認されないまま、誰かの次の機会を決めてしまうことです。
4. アンコンシャス・バイアスは、なくすことを目指すものではない
人が人を判断する以上、アンコンシャス・バイアスの影響を完全にゼロにすることはできません。
私たちの判断には、これまでの経験や学習、社会の中で繰り返し見てきたイメージなどが影響しています。
だから重要なのは、バイアスをなくそうとすることではなく、バイアスによって、本来見るべき事実や能力、可能性が見えなくなることをできるだけ防ぐことです。
これは、単に公平性のためだけではありません。
組織にとっても、本来任せることができた人、本来育成できた人、本来次の候補になり得た人を見落とすことにつながるからです。
バイアスの影響をできる限り小さくし、
その人について、本来見るべきものを、より正確に見て判断する。
そのために、人材判断の仕方を見直す必要があります。
5. 個人の「気をつける」だけでは、判断の仕方は変わらない
アンコンシャス・バイアスについて学ぶことには意味があります。
自分にも無自覚な思い込みや前提があることを知ることは、判断を見直す入口になります。
ただし、重要な人材判断を、一人ひとりの「バイアスに気をつけよう」という意識だけに委ねることには限界があります。
自動的に生じる判断は、本人が意識して起こしているわけではないからです。
だから組織では、判断のプロセスそのものに、確認や問い直しが起こる仕組みを入れる必要があります。
- 判断基準を事前に決める
- なぜそう判断したのかを言語化する
- 事実と推測を分ける
- 同じ基準で複数の人を比較する
- 本人の意向を確認する
- 一人だけで重要な判断を決めない
- 異なる視点から判断を確認する
重要なのは、一度出した判断を否定することではありません。
なぜそう判断したのかを言葉にし、その前提を問い直し、事実や別の視点を確かめたうえで、もう一度判断できるようにすることです。
6. DEIを「機会」につなげるには、判断の仕方を見る
DEIは、多様な人を組織に迎えることだけでは終わりません。
その人たちが、どのような仕事を経験するのか。
誰が新しい役割に挑戦するのか。
誰が次の候補として見られるのか。
その一つひとつを決めているのが、日々の人材判断です。
制度や人数を変えることと、人についての判断の仕方を変えることは、別の課題です。
だからこそ、DEIを実際の選択と機会につなげるには、
なぜ、その人を選んだのか。
なぜ、その人には任せなかったのか。
その判断は、何を根拠にしているのか。
という問いを、人材判断の中に持つことが必要です。
DEIを制度や人数から、実際の「選択と機会」につなげるために、いま問うべきなのは、人についてどのように判断しているのか。
MUSE Worksは、その判断の理由と前提を問い直し、個人の意識だけに頼らず、よりよい人材判断が起こるプロセスを組織に組み込むことに取り組んでいます。
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