国際女性デーに、いま考えたいこと

2026年は、男女雇用機会均等法の施行から40年という節目です。 制度としての男女平等は、確かに前進してきました。

一方で、「もう男女という切り口は古い」「個人の努力や選択の問題ではないか」 そんな声も、以前より多く聞かれるようになっています。

では、本当に“男女”という視点は、役割を終えたのでしょうか。

社会の基準は、時間をかけて作られる

社会の中で当たり前とされている基準や評価の物差しは、数年で形づくられるものではありません。

  • どんな振る舞いが評価されるのか
  • どんな役割が自然だと見なされるのか
  • 誰が前に立ち、誰が支える側に回るのか

こうした前提は、日常のやり取りや慣行、周囲の期待の積み重ねを通じて共有され、 長い時間をかけて無意識の基準として定着していきます。 だからこそ、基準を更新するには、同じだけの時間と設計が必要になります。

基準が変わると、判断のしかたが変わる

ここでいう「基準」とは、意見を言うか、言わないか、 役割を引き受けるか、避けるかといった場面で、 何を先に考えて判断しているか、ということです。

  • どう見られるか
  • どう評価されるか
  • 関係性がどう変わるか

こうした外側の反応が先に立つと、判断は「考え」ではなく「反応の予測」から始まりやすくなります。 反対に、基準が更新されると、「どう見られるか」ではなく、 「どう考えるか」「どう進めたいか」を先に置いて判断できる場面が生まれます。

次のセクションでは、こうした判断環境がどのように表れているかを、調査データで確認します。

ROXの調査が示している、ガールズの判断環境

米国の調査機関ROX(Ruling Our eXperiences)が公表した『The 2023 Girls’ Index』は、 5〜12年生の女子約17,500人を対象に、女の子たちが置かれている判断環境を整理したレポートです。

レポート全文(PDF): The 2023 Girls’ Index by ROX(Full Report / PDF)

レポートは、女の子たちが置かれている判断環境を、数字で示しています。

79%
「爆発しそうなほどのプレッシャーを感じている」
66%
「好かれたいから反対意見を言わないことがある」
55%
「ボスっぽいと思われたくないから、リーダーになるのが怖い」
76%
「同年代の男子は女子に敬意を払っていないと感じる」

ROXはこれらを、個人の性格や自信の問題ではなく、 social pressure and expectations(社会的圧力と期待)の影響として整理しています。

ROXが示しているのは「社会的プレッシャーと期待」の影響

重要なのは、ROXがこれらの回答を「confidence(自信)」そのものの問題としてではなく、 social pressure and expectations(社会的プレッシャーと期待)の影響として整理している点です。

たとえばROXのデータでは、66%が 「好かれたいから、言いたいことを言わない/反対意見を言わないことがある(because they want to BE LIKED)」と回答し、 また50%が 「リーダーになるのが怖い。ボスっぽいと思われたくない(BOSSY)」と示されています。

つまりROXは、意見表明やリーダーシップに関する選択が、 個人の内面特性ではなく、周囲の反応や評価を前提とした条件のもとで行われていることを示しています。

成人女性支援だけでは、追いつかない理由

これまでの女性活躍施策は、主に成人女性を対象にしてきました。 その意義は大きく、必要な取り組みです。

ただし、判断の基準がすでに固まった後で、それを修正し、選択肢を広げ直すのは簡単ではありません。 だからこそ、今、視点を前にずらす必要があります。基準が形づくられる、もっと手前の段階へ。

ガールズ支援は「支援」ではなく「投資」

ガールズ支援は、学齢期の入口で「選択肢が狭まる条件」を扱い直す取り組みです。 10年後、20年後の社会で、多様な意思決定を担う人材の層を、どう育てるか。

とくに日本では、理系人材不足が構造的な課題になっています。 その供給層を広げるうえで、これまで十分に活かされてこなかった層が、ガールズです。

  • 自分の基準で考える経験
  • 役割に縛られずに選択する経験
  • 「向いている/向いていない」を外部評価だけで決めない経験

こうした土台を持つことは、将来の進路や職業選択の幅を確実に広げます。 これは福祉でも啓発でもなく、人的資本への前倒し投資です。

「もう男女は古い」という言葉の落とし穴

「男女という切り口はもう古い」という言い方は、しばしば聞かれます。 しかし、ROXの調査結果を見る限り、判断の前提や行動の選択において、 性別による違いがすでに解消されたとは言い切れません。

ROXのデータでは、女の子の多くが、 「好かれたいから反対意見を言わない」「ボスっぽく見られたくないからリーダーを避ける」 といった理由で判断を行っていることが示されています。

これは、意見表明やリーダーシップに関する判断が、 いまなお性別と結びついた期待や評価を前提に行われていることを示しています。

判断のしかたに性別と結びついた傾向が残っている以上、 「男女」という視点を外すと、その傾向自体を分析や検討の対象にできなくなります。

国際女性デーは、誰のための日か

国際女性デーは、女性だけのための日ではありません。 社会の中に残っている見えにくい基準や物差しを、みんなで確認するための日です。

誰のための基準なのか。その基準が、誰の選択肢を狭めているのか。

MUSE Worksが向き合う問い

MUSE Worksが焦点を当てるのは、意思決定を左右する基準・評価・役割期待といった社会的な条件です。

  • どんな基準が、今も働いているのか
  • どこで選択肢が狭まっているのか
  • どの段階で、環境を更新できるのか

それを構造として捉え、企業・社会・次世代へとつないでいくこと。 国際女性デーは、その視点を共有するための一日です。

みんなの物差しを、少しだけ更新する

社会の基準は、すぐには変わりません。でも、問い直すことはできます。 基準が変われば、選択肢は増えます。 それは、誰かのためだけではなく、社会全体の未来にとっての投資です。


SheSTEM Japan(実装の取り組み)

こうした「判断の物差し」を学齢期の段階で扱い直し、将来の選択肢を広げる入口を設計する取り組みの一例が SheSTEM Japan です。

参考(ROX):
The 2023 Girls’ Index by ROX(Full Report / PDF)

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